監督:フィリップ・バランティー二
原題『Boiling Point』2021/95分/イギリス
飲食業界の苦悩/緊迫感/ワンショット
個人的評価:
90分間のワンショット撮影作品。
学生時代、飲食店でのホールの経験、そして管理栄養士として働いてきた社会人人生(突然の職業公開)すべてを通して、私が実感・経験してきた苦労・苦悩が詰まった映画で、共感する場面が多く正直開始5分から最後まで胸が苦しい思いでいっぱいでした。
飲食業界で働かれている方だけでなく、お客さんとしてお店を訪れるたくさんの人におススメしたい映画だと思い、興奮が冷めないうちに、取り急ぎ感想をザザッと書かせていただきます。
※ネタバレありですので、ご注意ください。
映画『ボイリング・ポイント/沸騰』のネタバレ感想
シェフたちの苦悩と緊迫感

あるクリスマスの夜、ロンドンの人気高級レストランにアンディ(主人公のシェフ)が遅刻して登場する場面から物語が始まります。
家族とは別居、息子に連絡をとる暇すらまともに取れない程に忙しい日々を送るアンディ。材料の発注を忘れ、タイミング悪くやってきた衛生管理検査では書類の不備や衛生面での指摘を受け、更には元同僚がグルメ評論家を連れてやってくる。そして、予約客は100名超えのキャパオーバークラス。まさに、『なんて日だ!』の日のおはなし。
映画を観ながら、厨房にいた頃の記憶が蘇って、胃がきりきり痛みました(笑)
時間に追われ、追われ、追われ、追われ、急な特別指示の注文や、材料の不足、客からのクレーム、アレルギー客、次々起こるアクシデント。
もう、ほんとに「今日が早く終わってくれ、どうか無事に早く終わってくれ!!」その感情1本ですよ。
そんな状況下で、ニコニコ優しくなんてしていられない。罵声が飛び交う状況なんて当たり前だよね、厨房の空気ってそうなるよね。そんな緊迫感に包囲された気持ちでいっぱいでした。いっぱい怒鳴られて、悔しかったり苦しかったりムカついたりしたことや、タイムリミットに毎食追われて走り回っていた事を思い出してしまいましたw

その他にもリアルだなって思う部分が結構あって、シェフたちと、ホールスタッフ・洗浄スタッフとの温度差だったり、新人の細々した質問にイライラ・バタバタしながら教える上司、猫の手でも借りたい時にちょっと抜けるわっていう人手不足の状況だったり、急なアレルギー指示が出た時の緊張感だったり。
アレルギーってほんとに怖いんですよね。映画中、アレルギー客来たー!絶対何か起きるやん!ってハラハラしてました。情報の共有の難しさ、忙しい時こそ、アクシデントは起きちゃうんですよね。
料理人として働く方々、こころの底から尊敬しています。
こんなプレッシャーの中、美味しい料理を提供してくれているなんて、すごいしか出てきません。
タイムリミットが目の前に次々と飛び込んでくるんですから。
ホールスタッフの苦労や思い

劇中、「ラムが生だ」とお客さんからクレームが入ります。
でもラムはピンクで提供するのがベスト!シェフは、これが1番良い状態だ!!そう言います。
ですがホールスタッフからすれば、お客様からの注文が絶対。お客様から言われれば、それはクレームなのです。
シェフたちは、良いものを提供しているにも関わらず、ホールスタッフがしっかりと説明できていないから、自分たちが失敗したものを提供していると思われる、自分たちへ責任を押し付けてくるな!と主張。そして、ちょっとした言い合いになります。
お客様と厨房との板挟み状態。あるあるですよね。
これで、栄養士と厨房スタッフが仲が悪い、とは良く聞くあるあるです(笑)
お客様を目の前にする苦労ってありますよね、それぞれのトークスキルも、厨房にリクエストを受けるキャパがどの程度あるかの判断もそう。お客様を満足させたいが、全てできるわけではない。
そこが上手く行かない様子が描かれていて、ここもすごく共感しました。
客目線になってみる

呼び鈴推したのに、全然来ないじゃん。
注文した料理、全然来ないじゃん。
間違えた料理運んできたじゃん。
なんか接客態度悪くね?
お客様ファーストだろ?
1つでも、そう思った事が一度でもある。〇か×か。
すみません。正直〇です。
だからこそ、全ての人にこの映画を観て欲しいんです。
少しでも、裏舞台の大変さを知って欲しい。
ちょっとしたミスなら広い心で受け止めるよ♪そんな、今よりもっと穏やかな気持ちになれるかもしれない。(まあ、アレルギーがある人にその食材出しちゃったとかは、キレても良い案件だとは思うんだけど)
お客様ファーストは、お店側の心構えであって、客がそういう思いでいるのは違うかなと思いますもんね。こっちは、大変な中美味しいご飯をありがとうございます。そんな気持ちでお食事に行きたいですね(笑)
まとめ
ラストは、疲労困憊。主人公アンディがぶっ倒れてしまいます。
ギリギリまで耐えていた沸騰寸前の状態。その一線を越えてしまったわけですね。
そのラストを重く受け止めました。エンディングでの余韻が半端なくて、ずっと苦しかったです。
ですが、このような映画がこの世に出たこと、また鑑賞できて本当に良かったです。
私は飲食店で働いているわけではないので、浅はかな発言をしてしまっているかもしれません。その際は申し訳ありません(´;ω;`)
そして飲食業界に携わったことがある身としては、あるあるやなって思う一方、そうでない方には、こんなギクシャクして罵声が飛び交うような店で食事したくない!そう思う人もいるかもしれない…観る人によっては、全然違う感想になるかもしれないですね(笑)
個人的には、2022年下半期良かった映画上位に食い込んできた映画でした。
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