※ネタバレにご注意ください!
気になっていた映画「Swallow/スワロウ」。
映画の世界観に引き込まれる、個人的に大好きな作品に仲間入りしました。
映画「Swallow/スワロウ」の概要

監督:カーロ・ミラベラ=デイビス
原題『Swallow』/2021/95min/アメリカ・フランス
スリラー/「生」の実感/映像美
個人的評価:
監督カーロ・ミラベラ=デイビスにとって、単独での長編映画監督デビュー作となっています。
映画予告動画
映画「Swallow/スワロウ」のあらすじ
ニューヨーク郊外の邸宅で、誰もがうらやむような暮らしを手に入れたハンター。しかし、まともに話を聞いてくれない夫や、彼女を蔑ろにする義父母の存在など、彼女を取り巻く日常は孤独で息苦しいものだった。そんな中、ハンターの妊娠が発覚し、夫と義父母は待望の第一子に歓喜の声をあげるが、ハンターの孤独はこれまで以上に深くなっていった。ある日、ふとしたことからガラス玉を飲み込みたいという衝動にかられたハンターは、ガラス玉を口に入れて飲み込んでしまう。そこでハンターが痛みとともに感じたのは、得も言われぬ充足感と快楽だった。異物を飲み込むことに多幸感を抱くようになったハンターは、さらなる危険なものを飲み込みたい欲望にかられていく。
映画.com引用
映画「Swallow/スワロウ」の登場人物
ハンター(ヘイリー・ベネット)

誰もが羨むような環境にいながら、息苦しさや孤独感を抱え、異物を飲み込むことでそれらから解放を感じている。
リッチー(オースティン・ストウェル)
一見、妻を大切にしている良い夫。
その優しさの裏側には独占欲や支配欲が隠れており、直接的ではなくてもこんな追い詰め方があるんだなと思いました。
映画「Swallow/スワロウ」の感想と考察
息が詰まる環境、自由のない鳥かごで飼われる主人公
映画を観る前は、異物を飲み込む事に快感をおぼえる、変態なあたおか女の痛々しいグロ映画なのかなと思っていました。
異物を飲み込んで快感を得ているという部分に関しては間違いないんですけど、そのバックにあるストーリーに共感しかなくて、観ていて主人公の息苦しさや孤独感がぎゃんぎゃんに伝わってくる映画でした。
金持ちで自分を愛してくれる夫と与えられた豪邸と自由な時間。
一見これでもかと人々が羨む生活を手に入れているように見えるのですが、映画が始まってすぐから、主人公の表情から”私は幸せではない”という悲しさのようなものが伝わってきます。
優しい夫やその両親。
主人公が異物を飲み込んでもなお見捨てずに治療に取り組ませる姿に、夫の両親はともかく、夫自身は本当に主人公を大切にしているんだなと思わされるシーンがありました。
ですが、映画が進むにつれて、主人公が感じる孤独や息苦しさというのがどこからくるのかが少しずつ見えてきて、観ているこっちも辛い気持ちになりました。
主人公の話を遮る夫の両親。仕事ばかりの夫。話をしっかり聞いてくれるのは、セラピーの先生だけ。良かれと思ってかけたネクタイのアイロンに苛立つ夫の姿。周囲にとっての自分の存在意義を考えてしまう出来事だと思います。
夫の友人とハグし合った時も誰かに求められたひと時の幸せに浸っているように見えました。
主人公が繊細で優しく、自分を愛してくれる人を失う不安もあるのか、不満をぶつける事もできない。もっと傲慢な性格なら、金持ちの優しい旦那と豪邸を与えられて好き勝手して良いだなんてパラダイスでしかないと思うんです。
後半見えてくるのが、夫やその両親の優しさが本当の愛情や優しさではなく、独占欲のような、主人公を支配しようとする本心。まるで、鳥かごに捕らわれ、餌を大量に与えられた自由のない鳥のようだなと思いました。
そんな鳥かごから逃げ出した主人公に旦那が放った言葉がほんとクソすぎて。
主人公の過去を含め、異物を飲み込む事が唯一の逃げ道になってしまった原因が一気につながりました。
こんな本心を胸の中にひそめてる奴らと生活していたら、そりゃストレスも溜まります。普通なら、そこで自分の家族や友人に相談したり、離婚を考えたりするでしょう。でもそれができないから、ストレスから異食症にまで発展してしまったのでしょう。
主人公の母親の気持ちも一生懸命想像しましたが、正直な話、私でも主人公を愛する事はできない気がします。それでもなるべく表には出さないように育ててきた事が電話で分かりますが、その母親からひしひしと伝わる嫌悪感のようなものが、彼女の心に小さい傷を沢山つけてきたんだろうな。と思うと悲しくて悲しくてたまらなくなりました。
最後に母親を襲った実の父親に会いに行きますが、なぜ会いにいったんでしょう。
私を恥じている?私はあなたとは違うよね?そんな事を尋ねていました。
同じ血は流れているものの、自分は恥ずべき行為を犯した父と同じけがれた血ではない事を証明したかったのでしょうか。それとも、母親や自分の夫等、自分を本当に愛してくれる人がいない孤独感から逃れたくて、唯一血の繋がる父親に会いたかったのでしょうか。
最後には、妊娠している子供の中絶を決心し、辛いながらに、強く前向きに人生を歩いていこうとする主人公が見えました。
中絶は辛い決断ですが、自分の母親と重ね、同じような事を繰り返さないようにという思いもあったのではないかなと思います。
エンディングの意味
エンディングが永遠に女子トイレの映像なのですが、皆さんはどんな意味合いがあると思います?
私が感じたのは、前に進もうという気持ちの切り替えを表しているのかな?と勝手に想像しました。
仕事で辛い事があった時、いったんトイレに行って気持ちを落ち着かせて、よし!あと少し頑張ろう。と自分を励ましたり、デートの前にはトイレの鏡の前で綺麗に着飾った自分をほめてみたり。
女性ってトイレの個室の中や鏡の前で気合いを入れなおす事って多いと思うんです(私が変じゃなければw)。化粧直しとかもそうですよね。
だから、主人公が新しい人生を強く生きていこうとする姿と重ねているのかなと思いました。
魅了される演技と映像美
この映画の見所は、何と言っても主人公と映像の美しさだと思います。
個人的には、そこを観る為に何度でも観れる映画だといっても過言ではないです。
異物を飲み込む時の痛み、孤独や悲しみがズンと伝わってくる演技。
そして、異物の中にビー玉や画鋲があるんですけど、それを主人公が手に取って口に入れて飲み込む様子だったり、排泄された異物を飾り物として綺麗に並べている映像。
どれもが本当に綺麗なんですよね。色彩も綺麗だし、インテリアも素敵、小物もファッションも魅力的で、映像だけでも十分楽しめると思いました。
まとめ
久しぶりに、登場人物の感情を想像をして、しっかり理解したいと思った映画でした。
お手伝いに来ていた看護師さんが、主人公の状況や気持ちを唯一理解してくれていて、救いがあって良かったですよね😂
多分また観るだろう、お気に入りの映画が増えて嬉しいです。
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